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『禁煙から脱たばこへ』

禁煙から脱たばこへ

『禁煙から脱たばこへ』
平成18年(2006年)4月発行

日本における喫煙は…?

我が国で「たばこ」と聞けば煙の出るものを思い浮かべるが、大リーグ中継などで目にする「噛みたばこ」やお菓子のような「ガムたばこ」も存在する。「ガムたばこ」は我が国で既に販売されているが、その害について十分な周知がされておらず、子供や青少年の健康が損なわれる危険性が迫っている。欧米では、口に含む「ガムたばこ」のほか、鼻に詰める「嗅ぎたばこ」も愛好されていて、がんなどの様々な病変が局所の粘膜に生じ、命を失う危険性も報告されている。

また、南アジアでは、ビンロウと共に「たばこ葉」を噛む習慣があり、そのような地域では口腔がんの死亡率が全てのがん死亡率の第1位となっている。我が国では煙が出るたばこの害については禁煙運動などによって広く知られているが、新たな「ガムたばこ」の害についてはほとんど知られていないので、全国的に販売される前に警鐘を鳴らす必要がある。

問題は何か?「ガムたばこ」の子供や青少年への影響

我が国で「ガムたばこ」が販売された場合、最も恐れるのは子供や青少年に甚大な健康被害をもたらす危険性についてである。「ガムたばこ」は煙が出ないので、子供や青少年が使用していても見ただけでは判断ができず、注意をすることも困難である。しかも子供が使用した場合にはより大きな健康障害が起こり、死に至ることも考えられる。少子化が問題となっている我が国にとって、子供や青少年への「ガムたばこ」の蔓延を防ぐことは極めて大きな意味を持つ。

たばこ規制枠組み条約(FCTC)が発効して禁煙の意識が高まっているときでもあり、煙の出ない「ガムたばこ」も含めてすべての「たばこ」から国民の健康被害を防ぐことが望ましい。

南アジア「ガムたばこ」の現状

南アジアには噛みたばこの習慣があるが、口腔がんの頻度は他部位のがんに比べて際立って高いという事実が明らかにされている。我が国には無煙たばこ(smokeless tobacco)の習慣はなかったが、喫煙に代わって「ガムたばこ」が蔓延することになれば、歯周病の増悪や口腔がん誘発の危険性が高まり、国民の健康が大きく損なわれることが懸念される。白板症および口腔がんは、特にアジア諸国において口内たばこ使用の結果として普通にみられる。

Simarakらはタイ国北部においてキンマ(betel leaf)を噛むことと口腔がんとの問に密接な関連があることを報告している。San-karanarayananらはインド南部における噛みたばこ使用と口腔がんの関連を見出した。Chak-rabartiらは噛みたばこ使用者では口腔内の前がん病変およびがん病変の所見が極めて高度であることを報告した。前がん病変としては噛みたばこ長期使用による独特の粘膜下線維症が最も頻度が高い。Nandakumarらは、男女を問わず相対リスクは高いが、女性の方がかなり高いことを見出している。Nairらは、インド産のたばこ製品を分析した結果から、噛みたばこの使用は発がん性のたばこ特異性ニトロソアミン類への高濃度曝露を引き起こすであろうと報告している。

南アジア「ガムたばこ」の現状南アジア「ガムたばこ」の現状

解決に向けて

期待される効果とは

  1. 「ガムたばこ」の日本での蔓延阻止を図ることにより、ガムたばこによる口腔がん、循環器障害の増加を予防する。
  2. ガムたばこが、喫煙の代替手段として未成年者にはびこる可能性を未然に防ぐ。
  3. 喫煙者に我慢を強いる「禁煙」から若者に対する「愛情卒煙」に切り替え、あらゆる種類のたばこ習慣から国民を開放する。
  4. 脱たばこ国家プロジ工クトの完成により、3兆円にも昇る医療費の削減が期待される。
  5. 日本が脱たばこ国家となれば、アジア諸国の脱たばこを強力に牽引し、特に南アジアにおける噛みたばこ習慣改善に大きく寄与することができる。

具体的方策(提言)

①「ガムたばこ」使用による健康危害研究推進及び研究結果を国民に伝える

「ガムたばこ」使用による人体への影響に関し、医学・歯学・薬学・看護学が連携して調査(国際疫学調査等)・研究を推進するとともに、その結果を関係機関に提出するとともに、併せて国民にわかりやすく伝える方策を実施する。当面、ガムたばこにおいても「たばこ製品」である以上、健康に対して警鐘する記述が包装の30%を下回らないように指導する。

「ガムたばこ」使用による健康危害研究推進及び研究結果を国民に伝える
②「ガムたばこ」の発売には医学的・歯学的評価を義務付けその結果を公表する

「ガムたばこ」をたばこ製品として発売する際には学術評価を義務付け、その結果を説明書として添付する。

「ガムたばこ」の発売には医学的・歯学的評価を義務付けその結果を公表する
③「たばこ製品」の販売を規制する

鹿児島県の種子島等で実証実験が行われている「たばこカード」の早期全国導入を図るとともに、適切な個人情報保護を図りつつも、青少年への転売を目的とする大量購入を防ぐ等、適切な販売規制という方法もー案である。さらに未成年者への販売が可能なインターネットによる宣伝販売について厳しい規制指導を行う。

「たばこ製品」の販売を規制する
④禁煙から卒煙までの教育体制を充実する

すべての教育機関において、「たばこ」による健康危害を説き、禁煙から卒煙へと指導を切り替える。医学・歯学・薬学・看護学の研究者が科学的根拠に基づいた指導を行うものとする。

禁煙から卒煙までの教育体制を充実する
⑤愛情卒煙

社会や職場において分煙や完全禁煙化が進んでいるなかで、単に喫煙者を隔離するのではなく愛情をもって卒煙を支援し、ガムたばこも含めた脱たばこ運動を家庭や学校へも展開し、若い世代へのたばこ使用の継代を防止する。

愛情卒煙
詳しい内容は日本学術会議ホームページへ

禁煙から脱タバコへ

ガムたばこの蔓延阻止に向けて

我が国における「ガムたばこ」の現状

我が国ではたばこを噛む習癖は一般的でなく、煙の出ない無煙たばこ(smokeless tobacco)も発売されていなかった。しかし、ガムたばこが「たばこ製品」として3年程前輸入販売され、新たな曙好品として若者の問に広まろうとしている。この「ガムたばこ」一粒には、通常のたばこ1本分に相当するニコチン1mgとたばこの葉そのものが含まれている。「たばこ製品」であるので未成年者が喫することは禁止されているが、一箱300円前後で手軽に買える値段であり、チューインクガムそっくりで甘く、たばこを初めて吸うよりは抵抗が少なく、通常のガムと見分けがつきにくいため子供や若者などが手を出しやすい。

なお、医薬品として薬局などで販売されている禁煙補助剤ニコチンガムにもニコチンが含まれているが、一箱2,000円以上もするのでたばこの代用品にはなりにくい。ただし一粒にニコチンが2mgも含まれているので、使用を誤れば「ガムたばこ」以上に危険である。

これらの製品は、たばこ代用品あるいは禁煙補助剤として販売されているがいずれもニコチン等の成分を含むため、新たな嗜癖を呼んで健康障害につながる危険性がある。

日本は本当のたばこからの開放を目指します

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